infatuation trap. |
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※fascinatly snake.のチャーリー視点※ ※チャリレイだけど、できてない設定で。※ 喉に正面から齧りつけば側面からの感触とは違って、ごり、と硬い歯ごたえ。滑らかな肌の下には、重い頭部を支える筋肉や骨や、食道。いろいろな器官が詰まっている。もちろん、血管も。 そして、不格好に浮かんだ軟骨。 どうしたわけか、今夜はここに血を絡めて食べるとひどく美味に感じられて。やたらと執着してしつこく喰らいついてしまう。 「・・・ソコは食べないほうが、いいんじゃないか。堕落するぞ」 なるほど。 食べてはいけないものほど美味なもの。天国を思わせるこの味わいは地獄へのチケットというわけか。罠は魅力的で獲物を惹きつける。 ―――マスターはいい加減、現実を見据えるべきだ。 あなたは「陽のあたる道をゆけ」などと、まるで私を神聖なもののように扱うけれど。まばゆい光を見るように目を細めて見つめるけれど。お忘れですか。私はもうとっくの昔に、あの雨の日に、禁断の果実を口にしてしまったのですよ。 だから私はわざと素知らぬふりをして返す。 「ああ、だからでしょうか。―――とても美味しいんです」 あなたの血は、私にとって極上の果実であり、ワインであり、そしてパンなのだ。 あなたは私を堕とすのを恐れて、それでいて渇望するかのように求める。罪悪感にまみれて、慄いて、私を誘惑する。そんなあなたを見ると私は暗い悦びに浸されるのだ。 あなたはまだ私を求めてくれている! もっと欲しがればいい。蛇のようにしろくのたうつあなたの媚態に脳天を打ち抜かれる。正気ではいられなくなる。 結構なことではないですか。 もっと、喰らえと誘惑したらいい。そんなあなたは目眩がするほどに魅力的だ。抗えないくらいに。そう口にすると、マスターがゆるく笑って揶揄するような口調。 「ふふ、堕落への誘惑に乗ろうなんて、お前らしくもない」 とんでもない! 私がかつてこの欲望に打ち克てたことがあるだろうか。先へ先へと引き延ばしこそすれ、そのいざないに手を振りほどけたことなど一度もなかったはずだ。 分からず屋のおしゃべりを阻止しようとしどけなく開かれた口に指を入れて舌を掴む。ぬるりと滑るそこもまた例外なく私を誘う。この人の口はいけない。あまい体液の匂いを撒き散らして、食虫植物よろしく引き寄せるのだから。 こんなにもヒトの、あなたの血を求める。どうせ私は魂が救われることのない哀れな吸血鬼だ。 ならば、せめてもっと欲しがらせてください。 「ねぇ、マスター。ここからいただいても?」 いやらしく濡れて、柔らかく温かい舌。きっとここから食べたら背徳的で素敵な味がする。私にただひとつの罪を犯させる、魅力的な罠。 「キスしたいってのなら、好きにすればいいい」 「違います。食事、です」 キスなんて優しいものじゃない。この行為はもっとはしたなくて、いやらしくて、暴力的で、原始的な。 牙を突き刺して。音が立つのも憚らずに。すべてを飲み込むように、啜って、啜って、嚥下する。舌を擦り合わせるのは愛の行為なんかじゃない。 「あ、あぁ……」 マスターがうっとりと声を上げる。そのかすれた低音でさえいざなう罠だ。けれど、既に堕ちた吸血鬼である私が何を恐れる必要があるだろう。マスターの血に潜む悪魔が自分に流れ込んで、それを恐れる必要が? 今更なんですよ。マスターの憂いは今更のものだ。 そう伝えたくて、この気持ちがあなたに流れ込めばいいと齧る顎部に力を込める。 ※ ※ ※ snake.のチェリー視点が気になる! と言っていただけたので、書きました。 歌詞は前回だいぶ使ってしまったので、今回は元ネタは気にせずチェリー視点に重点を置いてみたんですが、どうでしょう。雰囲気的には私がいつも書いてる甘いものとはちょっと違うと思うんですよね。チェリーが不貞腐れ気味だったり(笑)。 いつものとは別物として読んでいただければと思います。 たぶん期待されたのは、こういうんじゃなと思うんだ・・・。斜め上に行ってしまうのは当サイトの通常運転ですorz。 そしてsnake.同様文章が支離滅裂だよ! それもひとつの味として見ていただければ・・・(しどろもどろ)。 書く機会をくださったrさん、snake.を好きだと言ってくださったmさま。他にもブログ記事に拍手をくださった方にこの短文を捧げたいと思います。 2011.12 |
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