A to Z



企画物です。
アルファベットのAからZまでをキーワードに、超短文を書いていこうかと思います。
また自分の首を絞めるような事を(笑)。
途中で挫折したらごめんなさい。でもちょこちょこupしていきたいとは思ってます(~.~)。
テーマはいろんなシチュでいちゃいちゃv うっとおしいほどいちゃいちゃvv
糖分増量(当社比)。えちは書かないと思うけどそれ前提で。

以下のリンクよりどうぞ♪



・I ・ ・O ・ ・Q ・ ・U ・







A



 呼び鈴が鳴ったので、こんな夜更けにどんな来客かと訝りながらドアを開けると、そこにいたのはマスターだった。

「なんです、家の鍵なら持っているでしょう?まさか失くしたんじゃ」

   物に無頓着なこの人のこと。そうに違いないと説教モードに突入しそうになるところで、慌てて弁明が入る。

「違うって!手がいっぱいでドアが開けられなかったんだよ!」

 ほら、と腕に抱えた袋を差し出す。受け取って中身を確認すればずんぐりとした深緑のボトルが数本に大量の氷(冷蔵庫のない我が家 でこのボトルを冷やすためのものだろう)、それからちょっとしたスナックが入っていた。ボトルを1本引き抜きラベルを確認したとこ ろであきれた声になってしまった。

「マスター、またこんな高価な物を」

 再度文句が口をついて出そうになるのを、シーと人差指で唇を押さえられ黙らされる。

「今日は特別だからいいんだよ」
「は?」



 冷たくなったシャンパンをクリスタルのフルートグラスにマスターが注ぐと、ぱちぱちとちいさく弾ける音が、感覚の研ぎ澄まされた ヴァンパイアの聴覚を持つ耳に心地よく響いた。

「それで、今日はなんの日だというのです?」
「さぁ?」

 自分には覚えのない今日という日付。何度か尋ねてみたところで目の前の黒いシャツを着た人は素知らぬ顔で機嫌よく薄いグラスの淵 に口をつけている。

「それじゃぁ、クイズにしようか?1番、クリスが初めてトイレを覚えた日。2番、クリスが初めて俺に『大好き!』って告白した日。 3番、クリスがチェリーじゃなくなった日!4番・・・」
「どれも違うかと思われますが!」

 なにやら放っておくと自分の過去をある事ない事掘り返されてしまうようで大きな声で遮ってしまった。

「うん、まぁ、いっか。ありがとな、クリス」

 また意味深な微笑みと感謝の言葉に、こちらの言葉が詰まる。その感謝はどこに向けられているのです?



 本当は感謝の言葉が今日という日に似合うかどうかは自分でも分からないのだけど。こうしてクリスと共にグラスを傾けるという幸せ に思わず口をついて出てしまったのだ。だって息子が共に酒を飲めるほどに打ち解けて大人になるってことは親にとってひとつの喜びだ っていうだろう?
 今日は本当に特別なaniversary。
 140年ほど前に、あの薄汚れた天使のような戦争孤児が自分の元に現れた日。
 あの時出会わなければと思ったことはきっとお互いに何度もあったけれど、今はこの幸福に感謝をしたい。
 少し赤い顔をして、むきになって今日の日を考えている息子に中身の減ったグラスを向ける。

「さぁチェリー、難しい事は抜きにして、今日は楽しく飲み明かそうぜ」
 







CDでクリスも「半月から1カ月ほど一緒に居た」と言ってますし、分かれる前にレイフロも「これから寒くなる」って言ってましたの で、彼らが出会ったのは今くらいの時期(10月くらい)なのかなと。
もっと掘り下げて書きたかった気もしますが、まぁ、いいか。

シャンパンを何度も登場させてしまうのは私が酒好きなせいです。
でもレイフロには赤ワインやブランディの方が似合うかしら。


2010.10





B



頭部を固定されたまま、強く髪を掻き回された。

マスター、そんなに力を籠めたらせっかく綺麗に整えた爪が欠けてしまいます。そう言いたかったが、口はまだまだ血を求めて肌を這い、とても言葉を紡ぐことなんてできない。
まだ歯を立てていなかった右の肩に齧りつくとレイフロが息を詰めた。きっと彼の眼は痛みの快楽と己の血臭で刺激された食欲とで金茶に輝いているのだろう。吸血鬼の中でも特に美しいこの人の瞳を思うと身体が痺れるようだ。真祖ヴァンパイアの恐ろしいくらいの魅了。

「クリス」

首筋に顔を押しつけていたレイフロが名前と共に吐息を洩らし息のあたる場所を湿らせていく。まるで吐く息にまで麻酔の力があるかのように肌の感覚が鈍くなる。
「クリス」
何度も名前を呼ぶから身体は湿らされ肌を伝う雫は自分の汗か、breathの結晶なのかも分からなくなる。
このままでは身体が不自由になりそうで。
「すこし黙って」
そっと口を塞いだ。






C



いつもの悪夢を見て目が覚めた。
外はまだ暗い。おそらく深夜なのだろう、日の出はまだ先だと体が教えている。

あの人は家にいるだろうか。
夢の中でどんなに呼んでも戻ってこなかった彼の姿を確認しようとチャーリーは寝室を出た。

「―――出かけているのか」

「こんな夜中にどうしたんだ?」と聞かれたら「水を飲みに起きただけです。」と言い訳まで用意しておいたのに、リビング には誰もいない。暗い部屋の中にあるのは静寂のみ。
どうしても落ち着かない、こんな気持ちになるのは夢見が悪かったせいだ。
それでも気が急いて仕方がない。いないのは分かっていてもせめてその存在を確認しようと、レイフロの寝室に足を向ける。


部屋のドアを開けるといやでも圧倒的な存在感を放つ棺桶が目に入った。
今、casketの中身は空だ。
棺桶の横に跪き、その表面に施されたシンプルながら意匠の凝らされた彫刻をそっと指でなぞる。

「マスター、腹が減りました」

自分が今欲しているのは、彼の血なのか。彼自身なのか。
その答えはもう分かり切っているというのに、素直になれない自分は彼を求めるときにはついこう言ってしまう。

「腹が減りました」

ばからしい。中身が空の棺桶にこんなことを言っても仕方がないというのに。自分はなにを訴えかけようというのか。

「何をくだらないことを。―――もう寝よう」

答えるはずもない不在者にする代わりに、棺桶にキスをひとつしてチャーリーは自分の寝室へと戻った。



「ん?」

夜明け前。家に戻ったレイフロは眠りに就こうと棺桶の蓋を開けようとしたところで、ある匂いに気がついた。馴染みのある 嗅ぎ慣れた匂い。わずかだがクリスの気配が残っている。その思念も、感じられるような気がした。

「また悪い夢を見たからって、パパを探しに来たのか?仕方のない子だ」

こうして自分を追い求める彼は、昔を思い出させて自分を後ろめたい気持ちにさせる。
でも、少なくとも今は。未来のことは分からないけれども、今現在は共に在るのだから。

「かわいい坊やと一緒に寝てやるか」

チャーリーが目覚めた時にはふざけてセクハラの振りをすればいい。
その思いつきにくすりと息を漏らし、レイフロは彼のベッドに潜り込もうと自室を出た。







ミニドラマの「Cold Hand」ネタです。
casketは「宝石など大切な物をいれる小箱」という意味らしいのですが、遠回しの意味で「棺」でもあると辞書に書いてあり ました。
大切な物の入れ物、かつ棺なんて、チェリーにとってのレイフロの棺桶その物じゃないvvvと辞書を見てにやりとしてしま いました。






D



「あ〜つ〜い〜」

それは夏の夜。
日が暮れたというのに気温は下がらず、大きく開けた窓に掛かる薄いカーテンも無風のためにつとも動かない。
先ほどまで部屋の隅でバテていたミネアは涼を取りに夜の街に繰り出したのだろう、すでにそこにはいない。
レイフロは今宵何度目かの嘆願を家主である隷属に試みた。

「チャーリーくん!お願いですからエアコンをつけてください!!」
「マスター、エアコンは苦手だと申したはずですが。それに、先日どういう使い方をしたのか寝室のエアコンを壊したのはあなたでしょう。罰として1週間エアコンの使用は禁止です」
「この暑さを1週間っ!? ひどいっ、ひど過ぎる! こんな暑さじゃ体が腐るぞっ、いいのか?! 餌である俺の体が腐っても!!」
「意味の分からないことを言わないでください。それに仮にあなたの体が腐りはじめたとしたら、その時は対策を考えますよ」
「ひどい〜っ」

嘆願されたチャーリーはというと、切羽詰まったレイフロとは対照的に涼しい顔をして熱いコーヒーなどを啜っている。

「このくそ暑いのに、そんな涼しい顔をしているほうが人間離れしているぞっ。人外だって主張しているようなものだぞっ!」
「あなたと二人しかいない家の中です。問題ありませんね。それに『心頭滅却すれば火もまた涼し』。昔の騎士の心得ではありませんでしたか?」
「そんな異国の心得知らん!」

一向に取り合わない交渉相手と下がらない気温に、レイフロの血管が沸き立つ。仕方ない、あの術を使うしかないか。

「・・・チェリーがそんなに意地悪をするなら自力で部屋を涼しくするぞ。いいな、いいんだな!?」
「は、マスター何を」

チャーリーが不穏な雰囲気に驚愕するがもう遅い。チャーリーの制止する声に、レイフロが部屋を凍らせる呪文が重なった。

Diamond dust〜〜〜!!」








一巻のマリーのレイフロを凍らせた技はレイフロも使えるんでしょうか。涼しそうでいいな、あれ。
ところで呪文ていうか技、分かる人いますか?
相当昔の作品からの引用なんですが。星座のお兄さん達が戦うアレです。
不意に思い出したので使ってみました。懐かしすぎる。






E



 『元』優秀な吸血鬼ハンターであるチャーリーの元には、その豊富な知識のおこぼれに与かろうと様々な相談や検証などの仕事が舞い込んでくる。
 元々勤勉な性格の彼は標的になる吸血鬼の知識を得ることに貪欲で、探求のあまり寝食を忘れることがしばしばある程であった。
 勿論、情報が狩りに有利をもたらすことを身に染みて知っていたからなのだが、長年にわたる探求の結果、その知識は今では専門の研究者に匹敵するまでに至っていた。これでもチャーリーは、この業界ではちょっとは名の知れた存在なのである。

   作成した文書を保存するためにエンターキーを叩き、ふう、とチャーリーはひとつ息を吐いた。
 普通の人間であれば腱鞘炎になるではないかと心配になるほどの、猛烈な速さと時間を注ぎこんで打ち込んでいたキーボードから手を離し、両手を組んで頭上に引き上げる。伸びをすると想像以上に肩が強張っていたらしくばりばりと音を立てて筋肉が擦れるような気がした。
 ちょっとした本が作れそうなくらいの量のレポートをやっと書き終えた。あとは校正を済ませればこれでこの仕事のキリが付いたようなものだ。
 やはり凝り固まっている首を解すように頭を廻した。ぐるり部屋の様子が目に入る。数日根を詰めて仕事をしていたせいでデスク周りは雑然としていた。資料として使った本が何冊も床に置かれ、自分が以前のハント後に書いた報告書のファイルも開いたり閉じたりした状態で散らばっている。
 今回依頼されたレポートの内容は『吸血鬼の弱点と防御法について』。
 基本的すぎる内容ではあるが、仮に一般の人間が吸血鬼に狙われるとしたら一番必要になる知識だ。自分がこの仕事を引き受けることによって、一人でも多くの未来の被害者を救うことができればとチャーリーは願う。
 何の気なしに、床に置かれた本を1冊手に取りぱらぱらとページをめくる。ふと、ある箇所で手がとまった。
 チャーリーは吸血鬼に関する膨大な知識を持ってはいるが、すべて身をもって得たものであるとは言い難い。たとえば一般に吸血鬼が苦手と言われるものであっても、吸血鬼の素質の薄いチャーリーが難なく受け入れてしまうものも少なくない。
 ではこれはどうだろう。
 自分には何の効果もないものであるが、はたしてそれは実際に吸血鬼に対抗できるものであろうか。
 重労働後の疲れた頭にむくむくと探究心が膨れ上がる。事実か否かを確かめるにはexperiment(実験)が必要だ。事実をこの目で確かめなくては! 疲れ切ったためにやけに高いテンションでチャーリーは実験の準備を始めた。必要なものはただひとつ。幸いにも、キッチンを切り盛りする(とはいっても滅多に使われることはないのだが)ミネアに相談すると容易くそれは手に入った。
 トラップを仕掛けると、チャーリーは早々にベッドに入った。なにしろ3日間不眠不休でパソコンに向かっていたのだ。深い眠りはあっという間に彼を包み込んだ。

 翌朝。
 よく寝た、と清々しい気持ちでチャーリーは目覚めた。仕事の疲れも残っていない。上体を起こして伸びをし、深く吸い込む朝の空気は新鮮でおいしい。
 ただ、床から這い上がるような低い声さえなければ。
「1057、1058、1059・・・・・・」
 それは数をカウントしていた。
「おはようございます。マスター」
 爽やかにチャーリーが声を掛けたベッドの周りには、無数に芥子の種が撒かれていた。床に手をつき種を数えているのは、もちろん彼のマスターであるレイフロだ。可哀そうに一晩じゅう数えていた目にはうっすらと隈が浮かんでいる。
「本に書いてあったことは本当だったんですね」
「チェリーッ! 俺で実験するのやめろって言ってるだろ!! ・・・あぁっ、せっかく数えたのにまた分からなくなっちまったっ!!」
「マスター、今回も貴重な結果を得ることができました。ご協力感謝します。しかも実験のおかげで寝ている間にあなたに悪戯されることもなくゆっくり休むことができました」
 朝日のような輝かしい笑顔で、至極満足そうな様子でチャーリーが感謝の意を伝えるが、レイフロはそれどころではない。あぁ、脱力して灰になってしまいそう!
「チェリー、覚えてろよッ」
 遮光カーテンのきっちり閉められた部屋に恨めし気なレイフロの声が響き渡った。

 いつもの平和な朝の光景である?







 元ネタはこちら。
 『ヴァンパイア―吸血鬼伝説の系譜 』 森野たくみ著
※吸血鬼の弱点・・・数を数える物を置く。芥子の種や麦、雑穀などを利用した防御法。吸血鬼のいるであろう墓の周囲、あるいは墓から自分の家に向かう道に沿って種をまき散らしておく。こうしておくと吸血鬼はその粒を集めなければ気が済まなくなる。しかも1年に一粒しか拾い集められないらしく、気の遠くなるような長い間墓の近くから動くことができなくなる。また、網の目を数えたがる習性をもっているようで、窓や扉に網を置いておくと網の目を数えだして他の事が考えられなくなる。そうこうするうちに朝になってしまい、すごすごと墓に帰ってくという。(ネタはこれを組み合わせて使ってみました)

 そ ん な バ カ な w w w 

 でもレイフロが一生懸命数を数えたり粒を拾い集めてたりしたらかわいいなぁと思いますw



 AtoZものこり5個になると単語がこじつけになってくるよね・・・。



2011.11




F



「チェリーってば、や〜らし〜」
「・・・なんですか。いきなり」

重苦しいと思い目を覚ませば自分に乗り上げているレイフロと目が合った。暗がりの中だが、その瞳は楽しそうにきらきらと輝いている。そんなに眠っている息子にちょっかいを出すのが楽しいのか。というか、この切り出し方はどうだろう。

「だって、最近我慢しすぎなんじゃないの。チェリーは気付いてないかもしれないけど、自己主張しちゃってるぜ、ここ」
「え」
「欲求は溜めこむよりは、程よく発散した方が身体のためだぞ?」
「あなたが変に人を煽るからですよ。頭を冷やしますから降りてください」

肘をつき上体を起こそうとすると、そうはさせまいと顎を取られた。

「そんなこと言われても、こんなに堅く大きくなってるのを見ちゃうとパパとしては放っておけないよなぁ?」

するするとレイフロの整えられた爪がチャーリーをなぞる。

「ちょ、勝手に触らないでください」
「でも、俺は好きだぜ、おまえのそれ。形もいいし、質感も悪くない。肌に喰い込む感触ときたら毎度卒倒もんだ」

くくく、と口角をあげるとレイフロはチャーリの唇からのぞくそれを軽く爪弾いた。

「おまえの、その、Fang(牙)」







牙ってお食事中は伸びるカンジでいいんですかね。伸縮自在(笑)。
だって普通サイズじゃ血が出るほど穴開けられないよね?
「お腹空いたなぁ」と思うと勝手に牙が伸びたりしたら面白いのにと思って。
それにしても下ネタ風になってしまいました。ゴメンナサイゴメンナサイ(きっと暑さで頭ヤられてるんだ/汗)。